
特に演出が素晴らしい舞台…私はドラキュラの役だったのですが…ドラキュラが舞台に現れたり消えたりするのを、素早くしかも見事にできるようにと、ステージ・デザイナーが効果的な舞台装置を造ってくれました。
その装置に乗るのはちょっと楽しくもありましたが、事故が起こってケガ人がでないように、注意を払って慎重に乗らなければなりませんでした。しかも完璧に。すばやく床の落とし戸を開け閉めしてくれる技術者の助けを借りて、上がったり下がったりするのは、それこそコンマ何秒のタイミングでしなければなりませんでしたから。

観客には、そのカラクリが見えませんから、実に奇想天外に見えたことでしょう。舞台の評判も良く、私たち役者も舞台を楽しんでいました。
その演目は一年間、クイーンズ劇場で上演されました。(クイーンズ劇場では今までに数多くの有名な俳優が出演してきました)出演者はすべて素晴らしいイギリス人の俳優で、アメリカ人は私ひとり。舞台後には盛大なパーティも催され、初演の夜は素晴らしく魅惑的だったことを思い出します。

その公演中のこと、私の大変好きなプロデューサーが、彼が手掛ける映画に出てみないかと私に打診してきたのです。“WHY NOT STAY FOR BREAKFAST?”という映画でした。撮影には3週間かかるとのことでした。ということは…当時の私は、劇場で週に8公演行っていましたから、その上に映画の撮影に一日12時間とられ、それが3週間続くということです。
毎朝6時には撮影のためスタジオへ行き、夜8時には公演のため劇場に戻らなければなりません。家に戻るのは真夜中、そして午前4時には起きて撮影スタジオに行かなくてはなりません。なんというハードスケジュールでしょう! でも、私は引き受けることにしたのです。

正直言うと、一日3~4時間の睡眠という過酷なスケジュールでヘトヘトになりましたが、舞台も映画撮影も楽しく仕事をすることが出来ました。切羽詰まった時、俳優がいかにして、劇場でそして映画撮影で演じるエネルギーを得るのかを学べたことも、良い勉強になりました。引き受けてほんとうに良かったと思っています。

映画での共演者は、イギリスの人気女優ジェンマ・クレイヴンでったことも、付け加えておきましょう。

それから「ドラキュラ」ですが、ドラキュラを演じるのはとても面白く、楽しいものでした。舞台装置、照明、衣装をそれぞれ担当した才能豊かなデザイナー、そして配役、すぐれた監督と原作者。彼らのお陰で素晴らしい舞台となったことも、忘れてはなりません。
では、今日はこの辺で。次回、またお会いしましょう。どうぞお元気でお過ごしください。
ごきげんよう。
ジョージ